冬季うつとは?企業ができる予防と対策

お正月が終わり、仕事始めの方も多い時期かと思います。
厳しい冬の寒さも本番となってきました。

冬になると気分が落ち込み、日々の調子が出にくいと感じることはありませんか?

それは、単なる「季節の変わり目」の問題ではなく、
「冬季うつ(季節性感情障害):SAD(Seasonal Affective Disorder)」である可能性があります。
冬季うつの日本の発症率は100人に1-5人程度で、診断されていない同様の傾向を持つ人も含めれば、かなり身近な病態だと考えられます。
うつ状態が、心理社会的ストレスと関係なく、秋から冬にかけて発症し、春や夏になると症状が軽快することが特徴で、発生頻度は女性に多く、病因ははっきりと解明されていませんが、日照時間や遺伝的な光感受性の減弱が関係している可能性も指摘されています。
症状の特徴としては過眠、過食、炭水化物への渇望が出現し、結果として体重増加も起こってきます。
治療として、SSRIなどの抗うつ薬がある程度効果がありますが、高照度光照射を人工照明で行うことも効果的であることが判明しています。


冬季うつについて国内で行われた研究が興味深い結果を示しています。
参照:日本人の季節による気分および行動の変化(精神保健研究 39 ; 81-93, 1993)
札幌、秋田、鳥取、鹿児島という緯度差のある4地域に住む一般住民668名を対象に、気分や感情、睡眠・活動レベルが季節ごとにどのように変動するかを調査したところ、寒冷地ほど冬季に大きな影響が見られることが分かりました。

研究では、寒冷地に住む人々の多くが、冬季になると睡眠時間が増加する一方で、活動レベルが低下する傾向があると指摘しています。札幌では14.7%、秋田では16.5%の人が季節的な気分の変動を強く感じており、鳥取や鹿児島(平均11.5%)と比べて3〜5%も多いことが分かりました。この結果から、日照時間の減少や寒冷な気候が、気分や行動の変化に大きく影響を与えていることが示唆されています。

さあ、ここでクイズです。

こちらは、いずれの項目も冬に抑うつ傾向を強める因子としてあてはまるものですが、冬季うつに最も影響を及ぼすのは、
3)日照不足
です。

冬季うつの発症率は日本全体では1-5%程度ですが、北海道など日照時間が短い地域での発症率は約10%と高値です。
Magnusson et al., “An epidemiological study of seasonal affective disorder in Iceland” (2000)

冬季うつに対しては、日光を浴びることが最も有効であり、光治療も積極的に行われています。



Meestersら(2011年)が行った研究 
Meesters et al., “Bright light exposure and work-related seasonal mood changes” (2011)
では、明るい光への曝露が職場での季節的な気分の変化を軽減することが報告されています。この知見を活かし、企業が取り入れやすい具体的な方法をいくつかご紹介します。


1. 窓際の席を増やす

オフィス内で自然光を取り入れることは、冬季うつを予防・軽減するための基本的な対策です。日中の太陽光には、気分を向上させる効果があることが知られています。そのため、職場では可能な限り窓際に席を配置し、従業員が自然光を浴びやすい環境を整えることが重要です。特に、日当たりの良いスペースを会議室や倉庫として使うのではなく、従業員が日常的に過ごすデスクエリアに活用すると効果的です。


2. 自然光に近い照明を導入する

冬場の職場では、日照時間が少ない朝や夕方の時間帯を快適にするために、照明の工夫が必要です。自然光に近い明るい照明を採用することで、日光不足を補うことができます。


3. 昼休みに外出を推奨する

昼休みの時間を活用して、従業員が外に出る習慣を促すことも効果的です。短時間でも外の自然光を浴びることで、体内のセロトニン分泌が活性化され、気分が上向く可能性があります。例えば、「昼休みに10分間の散歩を」などのメッセージを掲示し、休憩時間中に外出を促す取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。また、チームで一緒に散歩するなどのイベントを定期的に開催するのも、社員間の交流を深めながら冬季うつを防ぐ良い方法です。


職場環境を整えることで得られる効果

明るい光の取り入れは、冬季うつのリスクを軽減するだけでなく、従業員のモチベーション向上や業務効率の改善にもつながります。Meestersらの研究においても、明るい光が気分やエネルギーレベルを回復させる効果が確認されており、特に冬季の職場環境では、このような対策が非常に有効であると考えられます。

職場全体で冬季うつに対する意識を高め、光を活用した取り組みを導入することで、従業員が快適に働ける環境を作り出すことができます。

次回は、日光がなぜメンタルヘルスを改善させるのか、効果的な日光浴のポイントについても説明していきます。

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