冬の落ち込みを予防する:日光浴がメンタルヘルスに効く

こんにちは。産業医として、日々の労働衛生の現場で気づくのは「知っているつもりで見過ごしがちな健康習慣」の重要性です。
その一つが「日光を浴びること」です。

寒い日や天気の悪い休日に1日中家の中で過ごすと、気分が鬱々としてきた経験をされたことはありませんか?

目次
1. 日光の量が少ない地域ほど自殺率が高い?!
2. 日光がメンタルヘルスを改善させるメカニズム
3. 効果的な日光浴のポイント

「⾃殺総合政策研究 第 4 巻 第 1 号 2024.3 」より引用

 東北の日本海側出身の私にとって、長期にわたる雪と寒さとどんより曇り空の数ヶ月間はともすると心身に不調をきたしやすい傾向を実感していました。
 高緯度地域や日本海側の日光暴露量が低い地域で、自殺率の高さや季節性うつ病のリスクが顕著であることがわかります。日光暴露量とメンタルヘルスは深く関連していることがわかっています。

日光がメンタルヘルスを改善する仕組み

 ⚫️生体リズム(概日リズム)の調整
 日光は、目の網膜を介して私たちの体内時計を司る「視交叉上核」に働きかけ、概日リズムを整えます。特に朝の光は体内時計をリセットし、活動的な1日のスタートを助けます。

 Czeisler et al.(1990)の研究で、日光が概日リズムの調整に重要な役割を果たすことが確認されています(下記)。

 ⚫️セロトニンとメラトニンの関係
 日光を浴びると、脳内で「セロトニン」と呼ばれる物質が分泌されます。セロトニンは気分を安定させ、幸福感をもたらす神経伝達物質です。また、夜になるとこのセロトニンが「メラトニン」に変換され、質の良い睡眠をサポートします。

 Lambert et al.(2002)の研究では、日光曝露がセロトニン濃度を増加させ、気分の安定に寄与することが示されています。(下記)

 ⚫️ビタミンDの生成
 日光を浴びると、皮膚でビタミンDが生成されます。ビタミンD不足は抑うつ症状と関連があることがわかっています。
 Anglin et al.(2013)のメタアナリシスでは、ビタミンD欠乏がうつ症状のリスク増加と関連していることが示唆されています。


効果的な日光浴のポイント


<最適な時間帯と持続時間>
時間帯: 午前中の9時~11時が理想的です。紫外線の影響を最小限にしながら、日光の恩恵を受けられます。
持続時間: 1日10~30分が目安。顔や手、腕などを軽く露出させて日光浴を行うことがおすすめです。
ただ、体内時計を整えたり、セロトニンの上昇などについては網膜を介した日光暴露が有効です。
晴れた日はカーテンをあけて室内で浴びることでも、曇りの日は窓をあけたりベランダにでて、空を見上げてみるとさらに気分が晴れやかになることを実感できます。ただし、直射日光は避けるように注意してください。

<場所の選び方>
窓越しの光ではなく、直接屋外で日光を浴びるのが効果的です。
散歩やベランダで1日15分程度日光浴を行うことがさらに効果を高めます。

<紫外線には気をつけて>
長時間の曝露を避け、必要に応じて日焼け止めや帽子を活用しましょう。紫外線対策と日光浴のバランスを取ることが重要です。

まとめ:日光浴は、手軽に始められる最良のセルフケアの一つです。

冬の季節に、気分が落ち込みがちである、日中の集中力が低下しているなどの傾向がある方や在宅勤務が多い方は、日々のルーティンにぜひ日光浴を意識的に取り入れてみてください。

参考文献:
Lambert GW, et al. Biological Psychiatry. 2002;51(12):1006-1011.
Czeisler CA, et al. Science. 1990;244(4910):1328-1334.
Anglin RE, et al. British Journal of Psychiatry. 2013;202(2):100-107.

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